日本老年医学会雑誌
Print ISSN : 0300-9173
高齢者における「生きがい」の地域差
家族構成, 身体状況ならびに生活機能との関連
長谷川 明弘藤原 佳典星 旦二新開 省二
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2003 年 40 巻 4 号 p. 390-396

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抄録

本研究の目的は高齢者における「生きがい」の有無と家族構成や生活機能ならびに身体状況との関連について, 農村地域と大都市近郊ニュータウン地域において比較検討することである. また「生きがい」の存在を規定する関連要因を明確にすることにより, 今後「生きがい」の構造を検討する際の基礎研究に位置づけようとするものである.「生きがい」という言葉は日本独特の意味を持っており, 専門家間での一致した定義づけは必ずしもなされていない. あえて英語に訳すならば, self-actualization (自己実現) や meaning of life (人生の意味), purpose in life (人生の目的) となる. 本研究では「生きがい」を「今ここに生きているという実感, 生きていく動機となる個人の意識」と定義して議論を展開した.
対象は農村地域として2000年10月現在, 新潟県Y町に居住している65歳以上の住民で回答が得られた1,544名であり, 大都市近郊ニュータウン地域として2001年1月現在, 埼玉県H町ニュータウン区域に居住している65歳以上の住民で回答が得られた1,002名であった.
農村地域と大都市近郊地域の間で「生きがいあり」の割合に有意差を認めなかった.「生きがい」の関連要因として, 両地域共に健康度自己評価, 知的能動性ならびに社会的役割が示された. 農村地域では家族構成が強い関連を認め, 性別や世代によって関連の強さが異なった. また大都市近郊ニュータウン地域では男性において入院経験の有無が「生きがい」の有無との間に強い関連があり, 世代によって正負の関連が変動した.「生きがい」を構成する内容についてはあまり検討されていない中, 今後は共分散構造分析を用いて「生きがい」の構造を明確することが望まれる. 更には, 自治体における「生きがい」推進事業を展開する上で具体的方策が開発されることが期待される.

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